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奇々怪々な事件と捜査

08年06月14日

No.838

この1週間の事件物のニュース・報道は、秋葉原の通り魔殺人事件ほぼ一色で埋め尽くされた。それはやむを得ないことだと思う。しかし、私には気になっていた事件があった。江東区のマンション女性“行方”不明事件である。この事件について、例外だが永田町徒然草No.821「マンション女性“行方”不明事件」と題して触れておいた。秋葉原の通り魔殺人事件が起こる前から、なぜかこの事件の報道が意外に少なかった

そのことについて永田町徒然草No.833「日曜日あれこれ」で、「ところで、江東区のマンション女性行方不明事件の報道がなぜか少ない。どうしてなのか」とだけ書いておいた。一昨日の夜くらいから、私はようやくマンション女性“行方”不明事件の報道に接した。だが、それも私がいちばん関心のあったことに触れてはいなかった。昨日のasahi.comの記事に、私が関心をもっていたことが記述されていた。少し長くなるが、その全文を引用させてもらう。なぜかというとasahi.comも日数が経つとインターネットで記事が簡単に見れなくなるからである。

切断遺体、2週間以上室内に隠す
  ――江東事件の星島容疑者

東京都江東区潮見2丁目のマンションで4月、会社員女性(23)が行方不明になり、遺体の一部が見つかった事件で、二つ隣の部屋の派遣社員星島貴徳容疑者(33)が、切断した女性の遺体を2週間以上、自室の段ボールの中などに隠していたことがわかった。この間、警察官が星島容疑者宅を3~4回調べていたが、発見できなかった。

 東京地検は13日、星島容疑者を住居侵入罪で起訴。深川署捜査本部は同日、死体損壊、遺棄容疑で再逮捕した。

 女性は会社員東城(とうじょう)瑠理香(るりか)さん(23)。調べでは、星島容疑者は4月18日夜から同月下旬に、自室の浴室で女性の遺体をのこぎりや包丁で切断。5月上旬にかけ、トイレに流したり、ビジネスバッグに入れて近くのマンションのごみ置き場に運んだりして遺棄した疑い。

 星島容疑者は4月18日午後7時半ごろ、帰宅直後の東城さんを自室に連れ込み、縛って監禁したという。女性の姉の通報で捜査が始まり、星島容疑者は同10時ごろ、自室前の通路で警察官と言葉を交わした。「女性を自分の支配下に置きたかったが、大騒ぎになってしまったので解放できなくなり、殺した。女性の痕跡すらなくしてしまおうと思った」と話しているという。

 星島容疑者は切断遺体をポリ袋に入れ、自分の衣服などが入った複数の段ボールや冷蔵庫の中などに隠していた。警察官は19日午後と20日午後に星島容疑者宅に入り、浴室や天井裏などを調べた。それ以降も立ち入ったが、任意捜査のため段ボールはふたを開けただけで内部までは調べず、異臭にも気づかなかったという。

 星島容疑者は「大きな骨はバッグに入れて運び出した」とも供述したが、これらの遺体は見つかっていない。19日以降、マンション出入り口で警察官が警戒するなかで遺体を持ち出していたという。

 星島容疑者は「暴行目的で自室に連れ込んだ。誰でも良かったが、自分の部屋のそばに住んでいた女性を手っ取り早く狙った。一人暮らしと思い込んでいた」と供述しているという。<2008年6月13日23時21分>

引用をさせてもらっておきながら誠に申し訳ないが、この記事は少し分かりにくい。新聞記事のイロハといわれる5W1Hがハッキリと書かれていない。それはこの記事を書いた新聞記者の責任ではなく、警察発表そのものが曖昧なことに起因しているのだと思う。この記事は、星島被疑者の供述をまとめたものであろう。被疑者の供述がどのようなものかは、現時点では警察しか判らない

この記事では、いちばん重要である被害者を殺した日時がハッキリとしていない。被害者が被疑者の部屋に連れ込まれたのは、2008年4月18日午後7時半ころであった。翌4月19日午後には、警察官が被疑者の部屋に入り、浴室や天井裏まで調べたという。殺害の時間は、この間であろう。殺害した時刻がハッキリしないので、深川署捜査本部は「死体損壊・遺棄」容疑で再逮捕したのだろうか。仮に殺害した時刻がハッキリしていないとしても、「殺人・死体損壊・遺棄」の容疑で逮捕すべきなのではないか。そうしないと勾留期間が法律の定めより長くなってしまう

 白川注:この記事では、警察官が被疑者の部屋に入り全室を調べたのは19日午後とされている。しかし、被疑者が逮捕された直後の報道では、「警察官が最初に被疑者の部屋に立ち入ったのは事件発覚の10時間後であった」とされていた。すると19日午前10時ころになる。

私がこの記事で注目しているのは、次の諸点である。
1 星島被疑者は切断遺体をポリ袋に入れ、自分の衣服などが入った複数の段ボールや冷蔵庫の中などに隠していた。警察官は19日午後と20日午後に星島容疑者宅に入り、浴室や天井裏などを調べた。それ以降も立ち入ったが、任意捜査のため段ボールはふたを開けただけで内部までは調べず、異臭にも気づかなかったという。
2 星島被疑者は4月18日夜から同月下旬に、自室の浴室で女性の遺体をのこぎりや包丁で切断。5月上旬にかけ、トイレに流したり、ビジネスバッグに入れて近くのマンションのごみ置き場に運んだりして遺棄した。
3 星島被疑者は「大きな骨はバッグに入れて運び出した」とも供述したが、これらの遺体は見つかっていない。19日以降、マンション出入り口で警察官が警戒するなかで遺体を持ち出していたという。

まず第1の点について述べる。遺体を切断した時間帯は、被疑者の部屋に女性を連れ込んだ4月18日午後7時半から翌19日午後までの間なのであろう。そうでないとしたら被害者の遺体がそのままあったのに警察官がこれを見逃したことになる。いくらなんでも、それはないと私は思うのであるが・・・・。
 また、被疑者は「切断遺体をポリ袋に入れ、自分の衣服などが入った複数の段ボールや冷蔵庫の中などに隠していた」が、被疑者の部屋に入った警察官は“任意捜査のため”「段ボールはふたを開けただけで内部までは調べず、異臭にも気づかなかった」点である。ここで“任意捜査のため”といって欲しくない。

次に第2と3の点について述べる。被疑者は大きな骨を「ビジネスバッグに入れて近くのマンションのごみ置き場に運んだりして遺棄した」という。事件が起きたからといって、マンションの住民の外出を禁止することはできないであろう。しかし、マンションの全室に立ち入り、遺体がないか調べたのである。警察は、マンションの住民すべてに犯行を犯した可能性があると考えていたのだ。そうだとすると、遺体をマンションの外に運び出す虞があり得るのである。その可能性があることについて、文字通り“職務質問”をすることができるし、またしなければならない。本当に遺体の一部をビジネスバッグに入れて持ち出し、近くのマンションのごみ置き場に捨てたのを警察官が見逃したとしたら、大失態である。

永田町徒然草No.821で、「まず事件が起こったひとつ隣の住民である被疑者に質問し、そののち被疑者の部屋に立ち入り全室を調べた時に、不審な事実を発見できなかったことが私にはちょっと理解できない。また被疑者が遺体の一部を出勤する時、持って出かけ近くのマンションのゴミ捨て場に捨てた場合、もしこれを見逃したとしたら捜査に手落ちがあったと考えざるを得ない」と私は述べた。私の杞憂はどちらも当たったようである。私が杞憂を抱いていたのは、最近の警察の捜査能力に関する危惧からである。そして、その原因を私は知っている。そのことは稿を改めて述べることとする。

それでは、また。

  • 08年06月14日 04時45分AM 掲載
  • 分類: 5.憲法問題

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