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“テロとの戦争の時代”の到来!?

15年12月05日

No.1799

今週も、実にいろいろなことが起こった。あまり楽しいニュースは、なかった。そして私は、憂鬱な気持ちで毎日を過ごしている。その最大の理由は、イギリスとドイツがイスラム国(IS)への軍事行動に踏み切ったことである。この2カ国が有志連合の構成国として軍事行動に踏み切ったために、「21世紀前半は、テロとの戦争の時代になる」ような予感がしてならないのだ。

“テロとの戦争”という言葉は、9・11同時多発テロの時にアメリカのブッシュ大統領(息子)が使った言葉である。アメリカ国民は、これを熱狂的に支持し、アフガン戦争に突入した。“テロとの戦い”は、昔からあった。テロの標的となった国家権力が、テロ組織やテロリストと戦うのは、当たり前のことであろう。しかし、“テロとの戦い”と“テロとの戦争”は、明らかに違う。

9・11以前のテロとの戦いは、諜報機関や警察権力が、その主体だった。テロ組織の実態が明らかになり、その組織を攻撃するために軍隊が出動することはあっただろう。しかし、テロ組織の捜索・攻撃やテロリストの逮捕・攻撃に最初から軍隊が出ていくことは、あまりなかった。今、テロとの戦争では、テロ組織への捜索・攻撃や、テロリストの逮捕・攻撃に、最初から軍隊が出動するのである。

9・11同時多発テロは、ビン・ラデンが率いるアルカイダの犯行であった。ブッシュ大統領によるアルカイダの攻撃・撲滅は、政治的に許されるであろう。しかし、タリバンが支配していたアフガニスタンという国に対して、圧倒的な軍事力で“戦争”を仕掛けるのは、果たして国際法上許されるのだろうか。私は最初から、それに疑問を抱いていた。

Obama and Biden await updates on bin Laden

2011年5月1日、ホワイトハウスの危機管理室で、ドローンからの映像で海神の槍作戦の模様を見守るオバマ大統領と国家安全保障チームの面々。
軍事・安全保障問題担当の幹部が顔を揃えている。(Wikipediaより)

アフガン戦争で、アメリカとその同盟国は、アルカイダを追って軍事作戦を行った。その過程で、多くのアフガニスタン国民が殺害された。ビン・ラディンは後にパキスタンで殺害されたが、オバマ政権になってからだった。アフガン戦争の後に、イラク戦争が始まった。その理由は、フセイン政権が大量破壊兵器を持っている → テロに使われる可能性大、ということだったのだろう。さすがに、ブッシュ大統領のこの理屈には、多くの国が疑問を呈した。イギリスのブレア政権は、行動を共にした。

SaddamSpiderHole

米兵に取り押さえられた直後のサッダームフセイン(Wikipediaより)

イラク戦争で、フセイン大統領は捕まり死刑になったが、大量破壊兵器は、最後まで発見されなかった。イラク戦争は、大義なき戦争となった。イラク戦争では、何十万というイラク国民が犠牲となった。オバマ大統領はイラクから撤退したが、イラク戦争とその後のゴタゴタの中で、イスラム国(IS)なるものが生まれた。

イスラム国について論じると長くなるので、ここでは必要なことだけ述べる。

イスラム国は、国際法上の国家ではない。しかし、これまでのテロ組織と違って、一定の地域を面的に支配している。その支配地域には、何百万という人々が生活している。軍事組織も持っている。そうすると、イスラム国という対象に対して、戦争という概念が成り立ち得る余地が生ずる。フランスのオランド大統領が、「これは戦争である」と言ったのは、このイスラム国に対しての戦争を意味しているのだろう。

フランス等は、イスラム国を撲滅させると言っている。たぶん、イスラム国は、広い概念で捉えるならば強力なテロ組織なのであろう。さらに、一定の地域を、国家と同じように軍事力をもって支配している。そんなイスラム国という組織と、その地域で生活している住民は、国家と国民という関係ではなかろう。そうすると、イスラム国を撲滅するということは、イスラム国と名乗るテロ組織の撲滅を指すことになる。

イスラム国の軍事組織やイスラム国の専用施設への攻撃は、確かにイスラム国を弱体化させはするだろう。しかし、イスラム国のメンバーは、イスラム国が支配している地域の住民の中に潜り込むだあろう。そうすると、イスラム国のメンバーのみへの攻撃は、現実問題として、非常に困難となる。アメリカもフランスもイギリスも、まさか「それは仕方ないことだ」とは言うまい。

とにかく、“イスラム国に対する戦争”が始まった。フランスではあまり反対がなかったが、イギリスでもドイツでも、相当数の反対があった。私は、反対した人々の意見をよく検討してみたいと思っている。いずれにせよ、戦争には多くの犠牲が発生する。その犠牲は、圧倒的な軍事力で攻撃されるイスラム国とその支配地域で生ずるであろうが、その反作用は大きい筈だ。その結果として、「21世紀前半の世界は、テロとの戦争の時代になる」ことを、私は憂いているのだ。

それでは、また。

  • 15年12月05日 12時28分PM 掲載
  • 分類: 1.徒然

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